そしてかぜまかせ

日々穏やかに過ごすために心を落ち着かせよう

2022-01-01から1年間の記事一覧

詩の朗読41. ポスト

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 ポスト 尾崎まこと この秋の 深い空のどこかに 赤い切り傷のような ポストの入り口が 隠れていないか カポン! ふいに あかるい音がして あなたからの なつかしい便りが 僕のこころの底に 降りてくる カポン…

詩の朗読40. 散歩

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 散歩 長田弘 ただ歩く。手に何ももたない。急がない。 気に入った曲がり角がきたら、すっと曲がる。 曲がり角を曲がると、道はさきの風景がくるりと 変わる。くねくねとつづいてゆく細い道もあ れば、おもい…

詩の朗読39. せつな

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 せつな 谷川俊太郎 テーブルのうえにあったいちまいのかみ へやのドアをあけたらふわりとゆかへ くうきにささえられながら みぎひだりにすべるようにゆれておちてゆく そんなどうでもいいできごとがすき な…

詩の朗読38. わたしの庭の・・

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 わたしの庭の・・ 新川和江 わたしの庭の ハナミズキが 葉を おとす すると どこやら遠い谷間(たにあい)でも いっぽんのハナミズキが 葉を おとす そこにも 人はいるだろう わたしとは かかわりもなき その…

詩の朗読37. 太陽

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 太陽 八木重吉 太陽をひとつふところへいれていたい てのひらへのせてみたり ころがしてみたり 腹がたったら投げつけたりしたい まるくなって あかくなって落ちてゆくのをみていたら 太陽がひとつほしくなっ…

詩の朗読36. 夕焼け

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 夕焼け 黒田三郎 いてはならないところにいるような こころのやましさ それは いつ どうして 僕のなかに宿ったのか 色あせた夕焼け雲のように 大都会の夕暮の電車の窓ごしに 僕はただ黙して見る 夕焼けた空 …

詩の朗読35. ある日ある時

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 ある日ある時 黒田三郎 秋の空が青く美しいという ただそれだけで 何かしらいいことがありそうな気のする そんなときはないか 空高く噴き上げては むなしく地に落ちる噴水の水も わびしく梢をはなれる一枚の…

詩の朗読34. きみはねこの友だちですか?

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 きみはねこの友だちですか? 長田弘 一ぴきのねこと 友だちになれたら ちがってくる 何かが もっと優しくなれるかもしれない ねこは何もいわずに語る はげしく愛して ゆっくり眠る きみはねこの友だちですか…

詩の朗読33. 手

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 手 山村暮鳥 しっかりと にぎつてゐた手を ひらいてみた ひらいてみたが なんにも なかつた しつかりと にぎらせたのも さびしさである それをまた ひらかせたのも さびしさである おやすみなさい

詩の朗読32. 葡萄に種子があるやうに

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 葡萄に種子があるやうに 高見順 葡萄に種子があるやうに 私の胸に悲しみがある 青い葡萄が 酒に成るやうに 私の胸の悲しみよ 喜びに成れ おやすみなさい

詩の朗読31. ふろふきの食べかた

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 ふろふきの食べかた 長田弘 自分の手で、自分の 一日をつかむ。 新鮮な一日をつかむんだ。 スがはいっていない一日だ。 手にもってゆったりと重い いい大根のような一日がいい。 それから、確かな包丁で 一…

詩の朗読30. ある日ある時

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 ある日ある時 黒田三郎 秋の空が青く美しいという ただそれだけで 何かしらいいことがありそうな気のする そんなときはないか 空高く噴き上げては むなしく地に落ちる噴水の水も わびしく梢をはなれる一枚の…

詩の朗読29. 夕焼け

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 夕焼け 工藤直子 あしたは かならず 晴れるに ちがいないなあ あしたも わたしは たしかに 生きるだろうなあ あしたこそなにかを みるかなあ きっと そうでありそうに ちがいなくそうと 思いたい …………… そん…

詩の朗読28. 花

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 花 工藤直子 わたしは わたしの人生から 出ていくことはできない ならば ここに 花を植えよう おやすみなさい

詩の朗読27. あいたくて

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 あいたくて 工藤直子 だれかに あいたくて なにかに あいたくて 生まれてきた ―― そんな気がするのだけれど それが だれなのか なになのか あえるのは いつなのか ―― おつかいの とちゅうで 迷ってしまった…

詩の朗読26. われは草なり

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 われは草なり 高見 順 われは草なり 伸びんとす 伸びられるとき 伸びんとす 伸びられぬ日は 伸びぬなり 伸びられる日は 伸びるなり われは草なり 緑なり 全身すべて 緑なり 毎年かならず 緑なり 緑のおのれ…

詩の朗読25. ある時

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 ある時 山村暮鳥 雲もまた自分のやうだ 自分のやうに すつかり途方にくれてゐるのだ あまりにあまりにひろすぎる 涯のない蒼空なので おう老子よ こんなときだ にこにことして ひよつこりとでてきませんか …

詩の朗読24. 自分は光をにぎつてゐる

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 自分は光をにぎつてゐる 山村暮鳥 いまもいまとてにぎつてゐる 而もをりをりは考へる 此の掌(てのひら)をあけてみたら からつぽではあるまいか からつぽであつたらどうしよう けれど自分はにぎつてゐる い…

詩の朗読23. 自分はいまこそ言はう

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 自分はいまこそ言はう 山村暮鳥 なんであんなにいそぐのだらう どこまでゆかうとするのだらう どこで此の道がつきるのだらう 此の生の一本みちがどこかでつきたら 人間はそこでどうなるのだらう おお此の道…

詩の朗読22. 風景 銀色もざいく

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 風景 銀色もざいく 山村暮鳥 いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな いちめんのなのはな かすかなるむぎぶえ いちめんのな…

詩の朗読21. 星とたんぽぽ

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 星とたんぽぽ 金子みすゞ 青いお空のそこふかく、 海の小石のそのように、 夜がくるまでしずんでる、 昼のお星はめにみえぬ。 見えぬけれどもあるんだよ、 見えぬものでもあるんだよ。 ちってすがれたたんぽ…

詩の朗読20. わからない

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 わからない 杉山平一 お父さんは お母さんに怒鳴りました こんなことわからんのか お母さんは兄さんを叱りました どうしてわからないの お兄さんは妹につっかかりました お前はバカだな 妹は犬の頭をなでて …

詩の朗読19. 水のこころ

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 水のこころ 高田敏子 水は つかめません 水は すくうのです 指をぴったりつけて そおっと 大切に── 水は つかめません 水は つつむのです 二つの手の中に そおっと 大切に── 水のこころ も 人のこころ も お…

詩の朗読18. 行く

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 行く 石垣 りん 木が 何年も 何十年も 立ちつづけているということに 驚嘆するまでに 私は四十年以上生きてきた 草が 昼も夜も その薄く細い葉で 立ちつづけているということに 目をみはるまでに さらに何年…

詩の朗読17. ぼくは小さな雲だから

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 ぼくは小さな雲だから やなせ たかし 生まれたところも しらないし いつ死ぬのかも わからない ぼくは小さな 雲だから ただたよりなく 空にいて 風にふかれて とぶだけさ ぼくは 無限の旅をする 雲に生まれ…

詩の朗読16. 白い自由画

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 白い自由画 丸山 薫 「春」という題で 私は子供たちに自由画を描かせる 子供たちはてんでに絵の具を溶くが 塗る色がなくて 途方に暮れる ただまっ白い山の幾重なりと ただまっ白い野の起伏と うっすらとした…

詩の朗読15. 宇宙(そら)の約束

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 宇宙(そら)の約束 山元加津子 自分の身体のその奥に 確かに確かに座っている 大きな宇宙の約束が いつもいつもささやいている いつかいい日の明日のために、いつもいつもささやいている 忘れないでね 大切…

詩の朗読14. 心 よ

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 心 よ 八木重吉 こころよ では いつておいで しかし また もどつておいでね やつぱり ここが いいのだに こころよ では 行つておいで おやすみなさい

詩の朗読13. 日の光

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 日の光 金子みすゞ おてんと様のお使いが そろって空をたちました。 みちで出会ったみなみ風、 (何しに、どこへ。)とききました。 ひとりは答えていいました。 (この「明るさ」を地にまくの、みんながお…

詩の朗読12. ここ

静かに ゆっくりと 言葉を声に出してみましょう。 ここ 谷川俊太郎 どっかに行こうと私が言う どこ行こうかとあなたが言う ここもいいなと私が言う ここでもいいねとあなたが言う 言ってるうちに日が暮れて ここがどこかになっていく おやすみなさい。

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