仏教では、「布施」は慈悲の心をもって他人に財物などを施す、六波羅蜜(ろくはらみつ)と呼ばれる、悟りを求める菩薩の6つの実践徳目のひとつと言われていますが、本来それだけを示す言葉ではありません。
私たちの日常生活においてお金がなくても物がなくても、周りの人々に喜びを与えていく少しでも喜んでいただける方法があります。
それが「無財の七施」の教えです。
身近な奉仕や実践によって、自己を高めることができるとともに、世の中の人々の心を和ませることができるのです。
人との出会いやつながりはもちろん、お互いの助け合い、支え合いの中で私たちは生きています。
私たち一人ひとりのささやかな行いが、周りの幸せのためになり、行いを通じて自分も幸せになります。
その七つの布施とは、
1. 眼施(げんせ)
心からのやさしい眼差しを持ってすべてに接すること。
2. 和顔施(わがんせ)
いつも和やかに、やさしい微笑みをもって人に接することこと。
3. 愛語施(あいごせ)
ものやさしい言葉思いやりを持った言葉で人に接すること。
しかし叱るときは厳しく、愛情こもった厳しさが必要で思いやりのこもった態度と言葉を使うこと。
4. 身施(しんせ)
自分の体で奉仕すること。模範的な行動を、身をもって実践すること。
人のいやがる仕事でもよろこんで、気持ちよく実行する。
5. 心施(しんせ)
自分以外のものの為に心を配り、心底から、共に喜んであげられる、ともに悲しむことが出来る、他人が受けた心のキズを、自分のキズのいたみとして感じとれるようになること。
6. 壮座施(そうざせ)
席を必要としている人に快く譲ること。
座席に限らず、譲り合う心が大切であるという意味も含まれている。
7. 房舎施(ぼうしゃせ)
雨や風をしのぐ所を与えること。
たとえば、突然の雨にあった時、自分がズブ濡れになりながらも、相手に雨のかからないようにしてやること、思いやりの心を持ってすべての行動をする。
いつでも、どこでも、誰に対してでもできることです。
ところが、自分に余裕がないときはどうでしょうか。
自分自身が辛いなかで、笑顔で接したり優しい言葉をかけるのはとても難しいことです。
辛い状況だから笑顔や優しい言葉を向けられなくても仕方ないという心が出てきしまうのです。
これでは布施の行いも、施しとはならなくなってしまいます。
無財の七施は、人に恵みを与え、その人の心と人生を豊かに幸せにするものです。