そしてかぜまかせ

日々穏やかに過ごすために心を落ち着かせよう

詩の朗読11. 旅情



 静かに  

 ゆっくりと  

 言葉を声に出してみましょう。



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 旅情

           石垣りん



ふと覚めた枕もとに

秋がきていた。

 

遠くから来た、という

去年からか、ときく

もっと前だ、と答える。

 

おととしか、ときく。

いやもっと遠い、という。

 

では去年私のところにきた秋は何なのか

ときく。

あの秋は別の秋だ。

去年の秋はもうずっと先の方へ行っている

という。

 

先の方というと未来か、ときく。

いや違う、

未来とはこれからくるものを指すのだろう?

ときかれる。

返事にこまる。

 

では過去の方へ行ったのか、ときく。

過去へは戻れない、

そのことはお前と同じだ、という。

 

がきていた。

遠くからきた、という。

遠くへ行こう、という。




   おやすみなさい

 

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