静かに
ゆっくりと
言葉を声に出してみましょう。
白い自由画
丸山 薫
「春」という題で
私は子供たちに自由画を描かせる
子供たちはてんでに絵の具を溶くが
塗る色がなくて 途方に暮れる
ただまっ白い山の幾重なりと
ただまっ白い野の起伏と
うっすらとした墨色の陰影の所々に
突き刺したような疎林の枝先だけだ
私はその一枚の空を
淡いコバルト色に彩ってやる
そして誤ってまだ濡れている枝間に
ぽとり!と黄色のひと雫を滲ませる
私はすぐ後悔するが
子供たちは却ってよろこぶのだ
「ああまんさくの花が咲いた」と
子供たちはよろこぶのだ
おやすみなさい