詩の朗読18. 行く
静かに
ゆっくりと
言葉を声に出してみましょう。
行く
石垣 りん
木が
何年も
何十年も
立ちつづけているということに
驚嘆するまでに
私は四十年以上生きてきた
草が
昼も夜も
その薄く細い葉で
立ちつづけているということに
目をみはるまでに
さらに何年ついやしたろう
木は
木だから。
草は
草だから。
認識の出発点は
あのあたりだった
そこから
すべてのこととすれ違ってきた
自分の行く先が
見えそうなところまできて
私があわてて
立ちどまると
風景に
早く行け、と
追い立てられた
おやすみなさい