そしてかぜまかせ

日々穏やかに過ごすために心を落ち着かせよう

詩の朗読54.木陰

 

 
 静かに

 ゆっくりと

 言葉を声に出してみましょう。

 

 

 

 

 

 木陰

      中原中也 

 

神社の鳥居が光をうけて

楡(にれ)の葉が小さく揺すれる

夏の昼の青々した木蔭(こかげ)は

私の後悔を宥(なだ)めてくれる

 

暗い後悔 いつでも附纏(つきまと)う後悔

馬鹿々々しい破笑(はしょう)にみちた私の過去は

やがて涙っぽい晦暝(かいめい)となり

やがて根強い疲労となった

 

かくて今では朝から夜まで

忍従(にんじゅう)することのほかに生活を持たない

怨みもなく喪心(そうしん)したように

空を見上げる私の眼(まなこ)――

 

神社の鳥居が光をうけて

楡の葉が小さく揺すれる

夏の昼の青々した木蔭は

私の後悔を宥めてくれる

 

 

 

 

 おやすみなさい

 

 

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