そしてかぜまかせ

日々穏やかに過ごすために心を落ち着かせよう

詩の朗読42. 夢売り

 

 
 静かに

 ゆっくりと

 言葉を声に出してみましょう。

 

 

 

 

 

 夢売り

       金子みすゞ

 

年のはじめに

夢売りは、

よい初夢を

売りにくる。

 

たからの船に

山のよう、

よい初夢を

積んでくる。

 

そしてやさしい

夢売りは、

夢の買えない

うら町の、

さびしい子等の

ところへも、

だまって夢を

おいてゆく。

 

 

 

 

 

 おやすみなさい

 

 

詩の朗読41. ポスト

 

 
 静かに

 ゆっくりと

 言葉を声に出してみましょう。

 

 

 

 

 

 ポスト

       尾崎まこと

 

この秋の

深い空のどこかに

赤い切り傷のような

ポストの入り口が

隠れていないか

 

カポン!

 

ふいに

あかるい音がして

あなたからの

なつかしい便りが

僕のこころの底に

降りてくる

 

カポン!

 

 

 

 

 

 おやすみなさい

 

 

詩の朗読40. 散歩

 

 
 静かに

 ゆっくりと

 言葉を声に出してみましょう。

 

 

 

 

 

 散歩

     長田弘

 

 ただ歩く。手に何ももたない。急がない。

気に入った曲がり角がきたら、すっと曲がる。

曲がり角を曲がると、道はさきの風景がくるり

変わる。くねくねとつづいてゆく細い道もあ

れば、おもいがけない下り坂で膝がわらいだ

すこともある。広い道にでると、空が遠くか

らゆっくりとこちらにひろがってくる。どの

道も、一つ一つの道が、それぞれにちがう。

 街にかくされた、みえないあみだ籤の折り

目をするするとひろげてゆくように、曲がり角

をいくつも曲がって、どこかへゆくためにで

なく、歩くことをたのしむために街を歩く。

とても簡単なことだ。とても簡単なようなの

だが、そうだろうか。どこかへ何かをしにゆ

くことはできても、歩くことをたのしむため

に歩くこと、それがなかなかにできない。こ

の世でいちばん難しいのは、いちばん簡単な

こと。

 

 

 

 

 おやすみなさい

 

 

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