そしてかぜまかせ

日々穏やかに過ごすために心を落ち着かせよう

詩の朗読31. ふろふきの食べかた

 

 
 静かに

 ゆっくりと

 言葉を声に出してみましょう。

 

 

 

 

 

 ふろふきの食べかた

                長田弘 

 

自分の手で、自分の

一日をつかむ。

新鮮な一日をつかむんだ。

スがはいっていない一日だ。

手にもってゆったりと重い

いい大根のような一日がいい。

 

それから、確かな包丁で

一日をざっくりと厚く切るんだ。

日の皮はくるりを剥いて、

面とりをして、そして一日の

見えない部分に隠し刃をする。

火通りをよくしてやるんだ。

 

そうして、深い鍋に放り込む。

底に夢を敷いておいて、

冷たい水をかぶるくらい差して、

弱火でコトコト煮込んでゆく。

自分の一日をやわらかに

静かに熱く煮込んでゆくんだ。

 

こころさむい時代だからなあ。

自分の手で、自分の

一日をふろふきにして

熱い器でゆず味噌で

ふうふういって。

 

 

 

 

 おやすみなさい

 

 

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